言いたいことは完結に。

Compactly Completed Comics

ねぇ マリア、また人の願いを代弁するの? …やっぱり マリアは悪魔だわ。

悪魔とラブソング 9 (マーガレットコミックスDIGITAL)
桃森 ミヨシ(とうもり みよし)
悪魔とラブソング(あくまとらぶそんぐ)
第09巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

マリアに近づく黒須を見て、焦りを覚える目黒。マリアを抱きしめたいけれど、辛い過去を思い出させるかもしれない…。悩む目黒は、マリアへの想いをピアノに託すことを決意。ところが、大切なコンサートの日に事件が!?

簡潔完結感想文

  • 広がる輪(ただし会員制)。お泊りは友情信頼度がアップするイベント。
  • 願いごと。目黒の七夕の短冊の願いをマリアが代筆。また同じ失敗を…。
  • 意外な犯人。珍しく伏線回収。この地味な人を読者は覚えているか?

長しているようでしていないことが判明する 9巻。

登場人物が どういう思考を持っているのか いつまでも理解できない。

感想を書くために少なくとも2度 読んでいるのですが、
どうしても本書の登場人物たちを掴めないでいる。

特に主人公のマリアが顕著で、
彼女を苦しめるために作品があると言っても過言ではないが、
彼女の自業自得や配慮の不足が原因だと思う部分も少なくない。

作中の人物たちが いつまでも同じところで足踏みしている印象が拭えない。

マリアにしても自分が浮かれている時は世界が「ラブリー変換」していて、
周囲の人への気遣いを忘れ、自由気ままに振舞う。

目黒 伸(めぐろ しん)は自分が決めた手法を頑なに守り続けている。
マリアと一定の距離を保つという彼の戒律は、しばしば緩む。
(目黒伸ってクロッシング=Crossing 交差点・十字路という意味もあるのかな?)

神田 優介(かんだ ゆうすけ)も目黒と同じ。
友達の距離感で居続けようとするが、しばしば愛に引き寄せられる。


10代の彼らが不安定なのは当然と言えば当然だが、
それ以上に作者の中で彼らという人物が固まっていない感じを受ける。

作者が描きたいシーンや展開にたどり着くために登場人物に一足飛びの行動させている。
その行動の飛躍が私の違和感へと繋がっているような気がする。

『9巻』で特にそれを感じたのは次の場面だ。


夕が近づき、下級生で新キャラの黒須(くろす)が笹を学校に持ってくる。
短冊も用意して各自に願いを書いてもらって、昇降口に飾ろうとしていた。

それぞれ願いを考えるが、マリアが目黒に短冊を渡すと、
「叶ったら だめなんだ 俺の(願い)は」と断られる。

これはマリアを抱きしめたいという彼の願望のことでしょう。

しかし目黒が彼女を抱きしめた瞬間、マリアは自分の過去を思い出し、
最悪の場合、彼女は自分の過去から逃避するため死を選ぶかもしれない。

だから目黒は叶わぬ願いを胸に秘める。

そんな目黒に「じゃあ あたしが かわりに目黒の分を書いてやる」と願いを書く。
それは「いつか目黒のピアノを コンサートホールで聴けますように」というもの。

それはマリアの願望だと言われ「コンサートホールで演奏したい」と願いを変換する。
そして それが目黒のピアノにおける新たな目標になる…。

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人に自分の願いを押し付けて失敗した過去は宇宙へポーイ! 学習能力が無さすぎる!!

れは友達以上恋人未満の2人の とってもいい話に思えるが、私は激しく疑問が湧く。

んーーーーー、誰かの思いを代弁して失敗したのは誰だっけ…?
勝手に その人を自分の中の像と重ね合わせて、その当人を像との不一致で苦しめたのは誰?

「あんな編」の全てが、今回の行動で無意味になってますけど⁉

目黒と話せたから また舞い上がったのだろうか。
そうやって自分の中の世界が「ラブリー変換」している最中に、
どれだけの人を傷つければ気が済むのだろうか。

それと同様に、マリアは神田も黒須も最高の友達という自分に便利な言葉を使うことで、
彼らの想いに答えない自分を正当化している気がする。

いい男に囲まれて この世の春を満喫しているマリアに、
正面切って彼女の自己中心的な行動をたしなめる あんな のような人物が物語には必要だったのだ。

マリアにも作者にも慎重な思考を求めたい。


して この件は目黒の方にも疑問が湧く。

マリアに願いを代弁され、それが彼の直近の目標となる。

そうして近視眼的になった彼は、
世界的指揮者の父親のコンサートに自分が出演できないかと交渉をする…。


これも首を傾げる行動で、目黒の性格が分からなくなる一件。

どちらかというとネガティヴな思考の持ち主で、
自分の才能に疑問を抱き、ずっとピアノから離れていた今の自分が、
一週間の練習で、いきなり一流のコンサートに出られるほどの技術水準なのか、
そういうことが許される立場なのか全く考えていない。

「恋は盲目」は便利な言葉だが、
もうちょっと冷静に自分を見つめていて欲しかった。
目黒なら冷静でいられる人だと思っていた。

お膳立てされて場所だけ用意される怖さを知っている目黒が、
再び、親の七光りと言われる未来予測や恐れを持たないことが不自然だ。


これが目黒の挑戦と成長になっているのは分かる。
だけど、あまりにも舞台が大きすぎないか?
親に頼ることなく着実に経験を重ねることなく、
親のコネを頼って、女性にいい所を見せたいという若さばかりが悪目立ちしている。

演奏後の目黒の態度も疑問。
懇願して父親のコンサートに出させてもらったのに、
その父のアンコールの依頼を無視して駆けだす目黒。
傲慢すぎる。
彼にプロ意識というものはないのか。
スタンドプレーが極まって、
私は目黒の努力の巻であるはずの『9巻』で彼を嫌いになりそうだ。


の巻のテーマはエロ、だろうか。

マリアへ過剰なスキンシップを求める黒須のエロス。
そして ねっとりとした目黒の奏でるピアノの音は官能的。

そして後々の展開を考えると、
彼らの人生の1つのピークだろうか。

マリアにとっては かけがえのない青春の日々。
普通の女子高生が過ごすような毎日を過ごせた。
友達と買い物をして、旅行をして、好きな異性がいるけど その距離感がもどかしくい。
「申し子」たちとの関係性だけは屈託がなく寛げている様子。
だが世界は彼女に嫉妬し続ける…。

お出掛けイベントでは絆が深まるのがお約束。

黒須が冗談でマリアに近づき過ぎて、
それを目黒は過敏に反応して黒須を殴ってしまう。
見守るはずの目黒だが、やはり一定の距離を保っていられない。

だが目的に対して心を一つにして協力すれば距離は瞬時に縮まる。
今回の火事騒動は文化祭や合唱コンクールなどと同じ効用だろう。
長い時間を過ごせば相手の良い所も自然に見えてくる。


黒の奏でるピアノの音が変わったことの背景は面白い。

機械のように弾いていた子供時代とは違い、
今はマリアへの想いを音に変換している。
これも一種の「ラブリー変換」と言えるかもしれない。

マリアに対して言うに言えないことが体に蓄積し、
その内に発散するしかない愛情やストレスを音に変換している。

マリアへの(肉体的・性的)欲求が音に変わっているから官能的に聞こえるのだろうか。


そうして目黒が努力と親のコネをフル活用して掴んだコンサート当日。
自分の出来る精一杯の自分になって会場へ向かうマリア。
これは「ラブリー変身」だろうか。

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突然開演、元町ミュージカル。ご機嫌に歌い出せば、ほら 人も不幸も集まる。

だが、マリアが路上で歌ったことによって悲劇が起こる。

目黒の演奏曲「アヴェ・マリア」が どんな曲か知りたい神田のために歌ったのだが、
街中の人に聞かせるように大声で歌うから注目の的になる。

今までは悲しい時に独りで歌っていたのに、今回は幸福感に包まれ全力歌唱。
もしかして また舞い上がっていたのだろうか。
マリアの悪い癖です。
自分のことだけは冷静な自分を保っていられない。


機嫌に歌ったマリアを襲ったのは意外な人物。

まさか伏線が活かされるとは思わなかった。
でも意外な人の再登場すぎて読者が覚えているか不安になったけど。

動機は彼女の持つ天賦の才(声)に嫉妬したから。
逆恨みもいいところです。
もし『7巻』でマリアが歌ってたりしたら、どんな事態になったのだろうか。

マリアに説諭され、そして去れと言われて いずこかへ消える犯人。
これが最後の登場になるのでしょうか。
分かりやすい退場演出がある分、ハナちゃん や あんな より待遇がいいかも?


しかし暴力を受けることでマリアはトラウマを発動してしまう。

自分の母親のことを思い出し、
自分という存在の汚れを思い出してしまう。

目黒の音を聞ける最良の日は最悪の日に転じる。

でも「ママや俊矢を苦しめた」の俊矢の部分は共感しかねるなぁ。
マリアが意図的に俊矢を苦しめたことは一度もないのに。
こんなことまで思うのなら「生まれて すみません」状態になってしまう。

どうにも ちょこちょこ調子外れのミスタッチがあるように思う。


良の日が最悪の日になったのは目黒も同じ。

エストロである父の声を無視して会場を出て見たのは、
マリアが神田と抱き合っているシーン。

目黒が想像するような恋愛沙汰ではないのだが、
自分が禁欲的に我慢していたことを、
誰かに先を越された事実で彼の視界は真っ暗になってしまった。

結局、黒須の言う通り、
目黒の姿勢など深い愛というよりは、やっぱり「ネクラな独占欲」だったようだ。

こういう時に あんな がいてくれたらな、と思う。

彼女も目黒を好き、というスタンスをとっていたが、
こういう事態には、落ち込む目黒に対して、あの歯切れのよい言葉で、
「マリアを想う気持ちはその程度でなくなるの?」
と筆記で叱咤激励してくれるだろう。

マリアも目黒も、こと恋愛に関してはネクラだから困る。

1回悪いことに遭遇すると、それをずっと引きずるだろう。
関係修復の道は長そうだ…。