言いたいことは完結に。

Compactly Completed Comics

んははは、お前が読んだのは特別編 四天王の一つに過ぎない。…という未来の到来 希望!

キスよりも早く Future (花とゆめコミックス)
田中 メカ(たなか めか)
キスよりも早く(きすよりもはやく)
特別編 Future 評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★(6点)
 

文乃と先生の結婚初夜のお話やふたりがついに初めてを迎えるお話etc――。先生と生徒の関係ではなくなった二人の初々しく、大人な出来事が盛りだくさん! 鉄兵が主役の「6月のつよがりリリィ」を含むふたりの結婚直後から10年後までを描いた大ヒット作特別編をすべて収録!

簡潔完結感想文

  • 特別編。読者の読みたい話が全部 描かれてる。まだまだ描かれてないこともいっぱい。
  • 夫婦編。遂にキスのその先を描く。するする詐欺は特別編ではありません。します!
  • 鉄兵編。本書の人気の半分は鉄兵で出来ていたのではないか。どこかBLっぽい⁉

結より先の出来事を描いた 『キス早』特別編。

作者が1/4の柱で「ひと組のカップルが家族になって円熟していく姿を描」くと書いていたが、
私は『Future』に作者の円熟を見た気がしました。

5年半に亘る連載が2012年に終了して、更に5年半が経過した2018年に特別編が出版された。

この時間経過や、発表の間隔が空いたことが良い方向に出ている。

良くも悪くもテンションを高く維持しなければならない連載から離れて、
じっくりと時間の経過や視点の変化が描かれているように思った。
作者自身も ゆっくり腰を据えて 改めて作品に向き合えたのではないか。

これまで以上に登場人物の心情に深く切り込んで、
「家族」として抱える悩み、喜び、幸せなど様々なことが盛り込まれた短編があった。


本書は本編最終巻で描かれた色々な空白を埋める作品になっている。
痒い所に手が届いた特別編である。

でも、これで終わりと誰も言っていないのだから、
Futureの その先を描くことも可能性も十分にある。

『12巻』でも書いたが、私としては駿が高校生になったNext Generationを読みたい。

あとは男女逆転で、一馬の妹・美留(みる)が女教師になって男子生徒と同居する『キス早 Female』。
以前も書いたが、こうなると一気に犯罪臭がしますね。
どうしても男子生徒だと性の匂いを感じるからでしょうか。
いや、一馬先生もアウトでしたが…。


でも まだまだ読者の痒い所も多いはず。

私は主人公たちが結婚して何の問題もなくなった先生の実家・尾白(おじろ)家との交流も見てみたい。
初孫にテンションの上がる尾白夫妻の様子を描いて欲しい。

『キス早』ワールドは まだまだ広がる予感がする。


「Future.1」…
結婚式の夜、つまり新婚初夜の2人の様子。
2人の結婚式は3月中に挙げたのだろうか。
3月中は身分的には高校生の訳で、結婚の事実が発覚して先生の評判は落ちないだろうか。

内容は本編の雰囲気そのまま。
激甘ムードを作りつつ、オチも あの頃のまま。
もしかして高校生の身分の内は手を出しませんでした、
という先生の完全潔癖宣言のための一編なのではないだろうか。

でも考えてみれば文乃(ふみの)の高校3年生の春休み(卒業後)は忙しい日々ですね。

卒業して、結婚式を挙げて、夫を見送って、大学の入学準備をして
先生こと一馬(かずま)抜きの弟・鉄兵(てっぺい)との
2人暮らしの生活サイクルも確立しなければならない。
卒業からの1か月余りで一気に大人になった感じがしますね。

先生の離島出発の日には、隣人・龍(りゅう)、弟の翔馬(しょうま)とメグも見送りに来ている。

「Future.2」…
結婚 即 別居が始まって4か月。
夏休みをとって一馬が初めて単身赴任先の離島から家族の元に帰ってきた日々。

これは『12巻』、最終話のラストからの続きですね。

でも『12巻』だと鉄兵は浴衣、文乃はコスプレに迷っている最中に一馬が帰宅してるのに、
『Future』だと水着エプロンになってる。
歴史が書き換わっているなぁ。

そういえば 文乃たち姉弟は一馬が離島に行っても、
同じ住居に住み続けているんですね。

そして卒業から4か月の この時点では翔馬は文乃に未だ未練たっぷりの様子。
夫婦の間に割って入り、邪魔しています。
(どちらかというと一馬に気があるような行動に見える(笑))

当日までの数日間に紆余曲折あったものの、
いよいよ2人が結ばれる日が やってきました。

今回は予告詐欺などではありません。
ちゃんと致しております。

少女漫画ブログを初めて1年4か月(2021年06月現在)、
白泉社の漫画で初めて性行為の描写を目にしました。

掲載誌が「ララ」のままでも そういうこと描けるんですね。

大学生になって、名実ともに先生と生徒ではなくなった2人は男女になる。
ちゃんと夫婦になったことを見届けられて読者も これで成仏できるんじゃないでしょうか(笑)

これを連載から一呼吸おいて、落ち着いた状況で 一夜のことを描けたのは良かった。

我慢が実を結んだ一馬は、龍にも感謝の言葉を述べる。
「オレ 一生わすれないわ…」と感動する龍。
私の中で、龍、一馬が好き説がまた浮上しました。

最後は、袴姿でスーツケースを持つカズマをお迎えする文乃たち。
鉄兵も大きくなっているし、これは文乃の大学の卒業式の日ということかな。

文乃の大学生は丸々 別居婚だったみたいですね。
この夫婦にとっては誰かの「卒業」が一つの区切りなのでしょうか。

「Future.3」…
クリスマスには家に戻れない先生を文乃たちが離島までサプライズ訪問する話。

文乃たちは初めて訪れる先生の赴任地の離島だが、
龍は 数か月の間で何回か先生の部屋に おしかけてるらしい(怪しい…(笑))。

この話で一馬が初めて文乃以外の女性からモテています。

彼女が本気を出したら物理的距離は圧倒的に文乃より優勢で、
文乃に写真などを送って嫌がらせをしてきたりしたら文乃の精神が崩壊する…。

これが連載だったら1巻ぐらい消費して2人のすれ違いを描くのだろうけど、
2人は盤石な夫婦であることは本編で描いてきたので、特別編ではそういう展開は割愛。

ますます一馬は荒くれ者の更生の実績が出来上がりますね。

この話は文乃が教師になった時の未来予想図でもあるのでしょう。
苦手な分野を克服した彼女だから説得力のある言葉をもって生徒に接することが出来るだろう。

「6月のつよがりリリィ」…
保育園からの幼なじみ・えみり は鉄兵のことを一途に想う。
だが従来からの関係性と強気な性格が災いして、2人は恋愛に発展しない…。

本編終了から10年後、鉄兵は16歳の高校1年生。
姉・文乃が通っていた学校とは別の学校で柔の道に汗を流している。

鉄兵もまた一途で笑える。
彼なら本気で「婚約」しそうである。
恋愛に関しては とことん即決の姉弟である。

しかし鉄兵の はだけた柔道着に目を奪われるとか、
何だか イケないことのような気がしてくるなぁ…。

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自分が たくさん守られていたことを知っているから、守ることのできる人になりたい。

そして叔父の智之(ともゆき)よ。
10年間、同じ高校の柔道部のコーチをやってるのに、あまり強くなってないみたいだが、いいのか?
首を切られないように。
智之の その後(教え子のトモエとの関係)は描かれませんでしたね。

鉄兵の所属する柔道部部長・羅尾(らお)は、文乃が高校生当時に先生をしていたラオ先生の親族ですかね。

「Future.4」…
これもまた高校生の鉄兵目線のお話。

私はこの話が一番好きですね。
10年という時の流れ、鉄兵の成長と成熟、そして葛藤が網羅されている。

鉄兵が姉夫婦だけじゃなく龍にも ちゃんと感謝する場面は感涙。
本当に何の関係もない幼き日の自分をずっと見守ってくれてましたから。
本編では本当に人使い荒く、便利に こき使われてましたね >龍先生。

一馬&龍の30代コンビは髪が短くなってますね。

そして いつも笑顔の鉄兵が心の底で抱える悩み、
結婚して10年間、姉夫婦が子供を設けなかったのは自分の存在があったからではないか、
というのも成長して自分の育ってきた特殊な環境を見渡して浮かび上がる懸念である。

それに対する一馬の答えも納得のいくもの。
一馬は妻のキャリアもしっかり守って計画してくれていた。

一馬の鉄兵に対する申し出に視界が滲むのだが、
一方で、これどんなBL?とも思ってしまった。

一馬・鉄兵・龍、この3人はどこを切り取っても素敵なBLになると思う(笑)

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出会ってから12年。僕はずっと この義兄のことが大好きだったんだ…(嘘)

鉄兵が文乃を抱え上げる場面なんて 特別編でしか読めません。
描いてくれて本当にありがとう、と思う。

…と、改めて4人で「家族」になった訳ですが、
『12巻』の巻末によると、
夫婦共々、教え子を自宅に連れ込むから(語弊あり)、
鉄兵は高校の寮に入っちゃうんですよね。

あれは作者の走り書きで仮の構想だから、無かったことにも出来るかな?
まぁ、どちらにしろ姉夫婦と子供、そして鉄兵の4人で「家族」になったから距離や形態の問題ではない。
それは文乃と一馬が この10年間で証明してくれています。


ちなみに文乃と一馬の子供は男児。名前は駿(しゅん)。
実家・尾白家の男性たちに引き継がれる馬シリーズが名前に入っている。
これは先生の尾白家への雪解けを表しているのかな。

でも、もし翔馬に男児が生まれなかったりしたら、
駿が尾白の家に縛られることになるのかなぁ。

尾白の家に招かれた瞬が高校生になったらグレたりして…。
歴史はこうして繰り返す(笑)


先生は子供に「母」を奪われて上手く愛せないかと心配してましたが、
どうやら溺愛のご様子ですね。

実は結婚後10年間 子供を持たなかったことが良い方向に作用しているしているのかも。
先生にとって まさに待望の子だったわけで、
父母の愛を受けなかった自分が親になれるかなどの悩みに立ち止まることなく、
全身全霊で愛する姿勢が生まれたのではないか。

また5年半後に短編集出してもいいんですよ >作者さま。