言いたいことは完結に。

Compactly Completed Comics

ないはずの資金も、いないはずの親族も どこからともなく湧いてくる…(深い溜息)。

キスよりも早く 7 (花とゆめコミックス)
田中 メカ(たなか めか)
キスよりも早く(きすよりもはやく)
第07巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

高校3年生になり、進路も見えてきた文乃。結婚一周年が近づいたある日、文乃は先生からディナークルーズに誘われて☆ 初キスを狙い大胆に迫る文乃に、先生の理性は崩壊寸前!! ベタ甘デートは非常事態宣言!? 先生の高校時代も明かされる!?

簡潔完結感想文

  • 進級。3年生となった文乃は進路に迷う。ただ の高校生に戻るため別居。
  • 過去編。少しずつ語られる先生の過去。まずは近いところから高校生編。
  • 紙婚式。結婚1周年を記念しての豪華ディナークルーズ。ライバル覚醒⁉

ういうものに わたしはなりたい、の 7巻。

主人公・文乃(ふみの)も『7巻』にて高校3年生に進学し、
進路を考える時期になる。

まさか本書で進路問題を採り上げるとは思わなかったが、
在学中にキスは出来ないため、卒業後の彼女の身の振り方も考えなくてはならないのだろう。

両親の死後、経済的困窮もあって担任である先生と結婚した文乃だが、
進路を決める際になって、叔父から亡き両親が残した学資金があると言われる。

はぁーーー⁉

作者としては文乃の進学費用まで先生が負担することのないように、
金銭面での問題で文乃を進学に後ろ向きに考えさせないようにという配慮だろう。

しかし この誰が管理して、どこに隠し持っていたか分からない謎の金が物語の根底を ひっくり返す。

そう、そもそも文乃は先生と結婚する必要がなかったのだ。

弟の鉄兵(てっぺい)が居るとは言え、その まとまった金額のお金があれば、
文乃は高校卒業ぐらいまでは2人で暮らしていけただろう。

今回回想される先生の高校3年生の時も、彼はバイトして自活していた。

続けざまの祖父・叔父の登場ときて、今回の遺産問題、
文乃が結婚をする意義が どんどんと崩壊していく。

こうなってしまうと、文乃は ただ好きな人と一緒にいたいから
高校生時分から同棲したいだけの人になってしまっている。

そして先生もまた、自分の願望を叶えるために、
教職という立場も考えずに、生徒をあるべき所に帰さない。

『1巻』でも感じた先生への嫌悪感、
綺麗な生徒を何かと理由をつけて囲い込むロリコン教師疑惑が再燃します。

それでいて先生は文乃に対して「妻」の立場が彼女の将来に影響しないように、と配慮する。
自由を与える寛容な夫を演じながら束縛の手は決して緩めようとはしない。

私が親族なら裁判しますね。
先生が教職も家族も失うことを望んでしまいます…。


頭は、保育園の催しの ハイキング&オリエンテーリング

先生も 梶(かじ)姉弟の お隣のお兄さんとして参加。

一番に山頂に到着した家族に贈られる金メダルが魅せられる弟・鉄兵。
そういえば文乃も先生のためとはいえ球技大会のメダル欲しがってましたね(『2巻』)。
メダルを欲しがるのは梶家の血筋か。
…いや先生も欲しがっている。

だが そこには孫と一緒に参加していた教頭もいた。

以前から2人の関係を不審に思っている教頭。
しかし今回は純粋なライバルとしての参戦のようだ。

そしてライバルとして戦ったことで、教頭の態度も少し軟化する。
学校側に2人の関係がバレる可能性が また減ったみたいだ。

基本的に2人の関係に反対する者は無力化してしまうのが本書の(生)優しいところ。

ちなみに教頭の孫が、鉄兵のことが好きな えみり ちゃん。
この夫婦、教頭とは末永いお付き合いになりそうですね。

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夫のヒーロー気質が家族にも伝播。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。

しかし塀や柵、崖から大事な物を落としそうになって拾うネタは何回目ですか…。
既視感ありあり。
にしても鉄兵のジャンプ力は驚異的だ。

物語の大筋も細部もネタの重複が目立ってます。

設定重視の白泉社の長期連載コメディは反射神経のネタ勝負だと思いますが、
作者には ちょっと向かないのではないか。

今度は もっと じっくり腰を据えた(全体の構成を考えた)作品を読んでみたい。


中の季節はゆっくり、でも確実に進み、文乃も3年生進級。
3年進級時にはクラス替えも担任の変更もないらしい。

そして3年生は本格的に進路を考える時期。

その問題に際して、先生は再び期間限定別居を申し出る。
別居は直近の4巻で3回目。
これは多すぎだろ。

曰く、
「これから3日間 「夫」の僕を忘れて
 自分の進路を決めてほしいんです」ですって。

なら、叔父である智之(ともひろ)が登場した時点で彼に任せればいいのに。

自分でも「いろいろ矛盾がある」と言っているが、
上述の通り、先生のやることが どんどん中途半端になっている。


文乃の進路は翔馬の言う通り就職が無難な選択だろうか。
せめて鉄兵の養育費や進学費用は文乃が用意するべきなのだろう。

しかし文乃は いつの間にかに伸びている自分の英語力に気づき、
進学も視野に入れ始める。

驚くことに文乃は、洋画も「字幕なしで6割くらいはわかる」らしい。
先生と英語の交換日記をするだけで⁉
そして なぜ それでヒアリングの能力の方が向上するのかは永遠の謎…。

文乃の進路のことは結構前から作者は考えていたのかな?


路に悩む3年生の文乃の次は、先生の高校3年生当時の お話。

この漫画、ネタに困ったら親族に頼るか、過去に頼るかしますね。
過去編は この後の巻にも登場します。

高校3年生で出会い、先生(以下、一馬(かずま))の人生に多大な影響を与えたのは、
その年から赴任した英語教師の前田(まえだ)。

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不良と優男教師のBL開幕。「空っぽ」だった俺を満たしてくれたのは先生なんだよ…。

にしても、この世界には童顔しかいないのか…。

荒れていた高校3年生当時の一馬は「英語だけ壊滅的な成績」らしい。

が、前の保育園のハイキング会では算数も壊滅的だったけどね…。
ちゃんと設定 覚えておこうよ。


しかし前田先生と一馬の話は、彼の恩人の話というより、
BLの1話目を読んでいるような気分だ(ちゃんと読んだことないけど)。

最初は反発していた一馬だが、「空っぽ」な気持ちが満たされていく。

そんな中、雨に降られた一馬に傘を差し出してくれたのは先生。
そうして連れ込まれたのは彼の部屋。
お風呂に入り、裸(毛布はある)で先生と2人きりの一馬は、
初めて先生と素直な心を通わす…。

この関係が先生の文乃に知られたら嫌われるかもしれないことだったりして…(『3巻』


妄想はさておき、ここの一馬の食事を提供され心が満たされる描写は、
『1巻』で先生と文乃の出会った1年前の梶姉弟の姿と相似を成すのだろう。

考えてみれば部屋の作りなども今の先生の部屋に似ているなぁ。

今も先生にとって忘れられない人なのだろう。
生き方も眼鏡も、今の一馬は高田先生のコピーに思える。
「空っぽ」の一馬だったけど、今もオリジナリティがないことも判明しちゃった⁉


そして今度は文乃が恩師に影響されて未来を切り拓く番。
前田先生に助けられた一馬が、今度は先生として文乃を助けた。

となると、文乃もまた人を助けるのだろう。
この想像は 本書のどんな場面よりも私の心を甘く溶かした。


後は豪華ディナークルーズでの結婚1周年の話。

夫婦2人きりじゃない時点で、今回もキスをしないことが決定的で興味が出ない。

タイトルの呪いが作品全体にかかり始めてきてますね。
もう どう考えてもキスをしない理由が見当たらないのに 絶対にしないから、
文乃の空回りが輪をかけて空回っているようにしか見えない。

マジで先生の偽装結婚説が正しいのではないかと思う、
先生の鉄壁(というか紙一重)の防御だ。


そうして先生がモタモタしている内に、
本書最大のライバルが目を覚ます寸前である。

キスさえしていれば こんなありきたりな展開にならなかったのに。
私は後半の分かりやすい当て馬との三角関係は あまり好きではありません。

血筋・外見・報われない性格、どれをとっても超一流の当て馬ですが、
当て馬として誕生してはいないキャラの運命を大きく捻じ曲げたところが気に入りません。