言いたいことは完結に。

Compactly Completed Comics

3か月で2回 別居してますが夫婦仲は、眠気を催すほど順調ですので ご心配なく。

キスよりも早く 6 (花とゆめコミックス)
田中 メカ(たなか めか)
キスよりも早く(きすよりもはやく)
第06巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

疎遠だった祖父とも和解し、両親の墓前に結婚報告をした二人。が、海外から文乃の叔父・智之が文乃たちと暮らすために帰国!? 先生との別居生活がスタート!! 尾白家に危機到来!? 修学旅行もありでラブ全開のナイショのエンゲージ★ロマンス

簡潔完結感想文

  • 別居。一族最強の別れさせ屋 登場。この結婚の意味が無くなってしまう事態。
  • 戦うパパ。家を出た妻子との再同居のため(語弊あり)、望みの無い勝負を。
  • 修学旅行。夫婦設定なしでも通用する先生と生徒の校外活動。逃がさない。

ポット参戦ばかりで使い捨てキャラが目立つ 6巻。

海外(翔馬&メグ)、そして血縁(祖父&叔父)からの新キャラ投入祭は続く。

白泉社漫画の多くは嫌というほど登場人物が多いが、
作者も定石を踏んで登場人物の数は増やしているのか。

…が、それを活かし切れていない。
もしかして大人数を動かすのは苦手なのだろうか。

単純に画面が うるさくなるのを避けたのかもしれないが、
登場人物の意外な共演をもっと見たかったと思うことが少なくない。

直近の2巻では天涯孤独だったはずの主人公・文乃(ふみの)の、
親戚がゾロゾロと登場するが、彼らは初登場時のスポット参戦だけで、
その後の物語に大きく関わってこない。

点と点が繋がって線になればいいのだけれど、点のまま点在するだけ。

文乃の祖父も叔父も一時の邪魔者でしかないんですよね。
親族なんだし雑魚キャラのような扱いにしないで欲しかった。

今後も彼らがレギュラーメンバーとして何度も登場するなら
世界観が広がって、2人(弟・鉄兵を含め3人)を見守る者が増えていく実感が湧いただろう。

でもサブキャラが いなくても成立してしまう話が多く、
それが世界の狭さ、マンネリを生む要因になっているのではないか。

夫婦仲の深さの描写に限界がきているのだから、
横の広がりをもっと丁寧に構築して欲しかった。


びしろのない夫婦を助けるため親戚総出演。

そういえば同じく同居モノである渡辺あゆ さん『L・DK』でも、
続々と親族が同居の部屋に来訪するという似たような現象がありましたね。
同居モノって、いわば出オチなんですよね。シチュエーションのみ。
そこからの発展性がないから、あれやこれやで千客万来状態にしていく。

驚くことに文乃の祖父は存命であるし、そして叔父は長期の海外滞在から帰国する。
もう お話の整合性とか当初の結婚の意味が崩壊している現状とかは無視です。

そして『L・DK』との もう一つの共通点は「胸キュン見本市」が開催されている点だろう。

こういうシチュエーション、少女漫画読者は好きだよね、というドキドキを満載してくれる。

今回、それを最も感じたのは先生の足での「壁ドン」。
2009年3月号から始まった『L・DK』が広めた(らしい)壁ドンですが、
本書では2009年9月号の回で足壁ドンをしています。
この年の女性には壁ドン欲求があったのでしょうか。

まぁ 先生の足壁ドンは ただの進路妨害なんですけどね…。

胸キュンシーンは、そのシーンのためだけに話が存在し、流れが不自然になってしまうことが多い。
本書でも先生をヒーローに仕立て上げるための演出が目に余る。

内容の無さを読者が喜ぶ胸キュンでカバーしようとしていると感じてしまう。


回、海外&親族から登場したのは文乃たちの父の弟、
つまり彼らの叔父にあたる智之(ともゆき・28歳)。

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叔父じゃなくて イトコだったら先生の最大のライバルになれたのに。なんだか惜しい。

ちなみに前巻『5巻』で祖父と再会し、和解した文乃。
祖父は文乃の、今の学校に通い続けたいという要求を呑んだので同居はしない流れ。

でも祖父との同居はともかく、先生の世話にならないよう金銭的援助をするなど、
採るべき施策はたくさんあるのに、本書最大の売りである、
結婚同居設定を失くすわけにはいかないので現状維持が続く。


それは叔父・智之が帰国しても同じ。
智之が文乃が学校に通える場所での同居を提案しても彼女からも作品自体からも拒まれる。

作者は巧妙に心情面と既成事実を前面に出すことで隠しているが、
そもそも文乃の先生との結婚の決め手は、弟・鉄兵(てっぺい)が路頭に迷わない選択肢だったからだ。

それを解決する方法が他者である先生を巻き込まず、
親族内で提案されたのなら、もはや 当初の問題はなくなった。

恋愛ごと禁止されている訳ではないのだから、
文乃は先生と あと1年ちょっと周囲にバレないよう交際すればいい。

長期的に見れば別居で先生のリスクは低減するし、
金銭的援助など先生の過剰な負担もなくなる。

なのに叔父さん自身も嘆いているが、
親族としての当然の援助が「悪役(ヒール)」扱いされる本書の価値観は疑問だ。

文乃の困窮を見て見ぬふりをした祖父は有罪だが、叔父に関しては無罪である。

2人の間に子供がいる訳でもないし、まだキスもしていないのだから、
一度、結婚をリセットすることが道理に思える。
少なくとも鉄兵は親族が面倒を見るのが適当だろう。

既に「家族」だから同居する、という論理だが
では 単身赴任の家庭は家族ではないのか。

結婚、同居、それをセットにしか考えられない本書の基本設定が邪魔である。


そして先生側の結婚・同居への拘りが少し気持ち悪い。

これでは担当生徒が困っているから手を差し伸べたのではなく、
最初から下心ありきで近寄ったと思えてしまう。

当然、同居によって愛が育まれたと読むのが普通だろうが、
文乃の問題が解決しそうなのに、教師として採るべき行動を採らずに、
自他の首を絞めるような既得権益への拘泥と死守は どうかと思う。


父・智之は先生より年長で、先生より特定分野(柔道)では強いという、
先生最強説を打ち壊してくれる稀有な人。

でも叔父さんだから文乃とは結婚できず、ライバルにはならない。
だから結婚や同居を邪魔するだけの存在で終わる。

これでは『4巻』の時の別居と同じ内容の繰り返しに思えてしまう。
せめて イトコ設定にしてくれれば、文乃を巡る争いの最大のライバルになり得たかもしれないのに。

うるさい叔父さんには若い女を あてがって、
先生と同じ立場にして黙らせるような手法に疑問を感じる。

あと、どいつもこいつも結婚を軽々しく口にするロリコンなのか⁉

叔父さん自身も結婚を軽々しく口にしたばかりに
女性も自分も膨大な時間を費やすことになったのに、
この後に賭け事の対象として また結婚を持ち出すとか、思考が残念過ぎる。

図らずも叔父さん自身が言っていたが
「そんなカンタンじゃねーだろ 結婚つーのは…」

結婚のデフレ化が止まらない。


しかし、この学校は治安が悪い。
この校内でトラブルを起こさなきゃいけないからなんでしょうけど、
知性ゼロの人間が徘徊しすぎている…。

それもこれも先生をヒーローにするための演出のため。

結婚と生活の安定と共に文乃の性格は落ち着き、
彼女自身は自ら暴力行為をすることはなくなったが、
憎しみや復讐は連鎖して、いつの間にか文乃に悪の手が忍び寄るのがパターンと化している。


いては別居解消をかけての柔道対決。

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結婚がキスよりも軽い世界。言い争いや 勝負の賭け事で結婚を持ち出される女性は幸せなのか?

先生と叔父さん との対決は、親族による結婚許諾の儀式ですね。
父親に結婚を申し込む青年と、その青年の漢気(おとこぎ)を見定める父親の男の戦い。
文乃の父親は既に亡く、叔父さんが代理を務めている。

国内有数の選手であった叔父さんに負けない執念と体力が先生の武器。

この話で最終回でも良かったのではないか。

最強であったはずの先生を負かすような存在が登場し、
気力・体力共に限界が来ても先生は「家族」のため戦い「家族」の声援を受けて立ち上がる。

いつも通りにキスは出来ないオチを変更して、
キスすれば もうそこは最終回になるじゃないか…。

先生の家族の問題は残るものの、
いつでも どこでも最終回に出来てしまうのが作品としての弱み。
いい加減「キス我慢選手権」の企画1本じゃ、読者も飽きますって。


居の復活は、離婚寸前までいったが復縁した家族のようである。

独り身の寂しさを痛感し、出戻った家族を歓待する先生。
でも それによって文乃は女性や妻ではなく、「家族」という1ユニットの一員になってしまう。
妻ではなく子供(鉄兵)の母として接するような感覚か。

子供が生まれて幸せだが、反面、夫は自分を女性として見てくれなくなった、
という結婚後数年経った後の妻の悩みのようである。


そんな頃に行われるイベントが修学旅行。
学校最大イベントで、取材旅行にも行ったのに1話限りに なります。
もしかして、どう頑張っても鉄兵を修旅に連れていけなかったからか??

久々の黒沢くん登場回でしたね。
ちょうど先生と文乃の間に隙間風が吹いているところだったので、良いタイミング。
ただ彼の望みはささやかで、強引さもないので、夜の街を一緒に歩くだけ。
次の彼の登場と活躍はいつになることやら。


せっかくの修学旅行で、場所も変わったが、内容は同じ。
我慢しているのは文乃だけじゃない、
先生もなんだ、っていう話の流れは何回目だろうか。

修旅が春休み中なので次巻から3年生に進級だと思うが、
3年生もこんな調子でお送りするのだろうか。
楽しみよりも不安が勝る。


あと、どんどん先生が寄り目になっているのが気になる。
特に決め顔が変。