言いたいことは完結に。

Compactly Completed Comics

悲劇のヒロインなので、傷ついた時に優しくされると好きになっちゃいます。

ヒロイン失格 8 (マーガレットコミックスDIGITAL)
幸田 もも子(こうだ ももこ)
ヒロイン失格(ひろいんしっかく)
第08巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

はとりを諦められないと悟った利太は、悪役になってもいいからと強引にキス! ここに新たな「邪道」が誕生! 迫りくる利太の影に焦る弘光は、はとりを一泊旅行に連れて行くための資金稼ぎにバイトを始めるが…!? おまけに「あの女」が大変身して再登場! はとりの恋愛に大きな暗雲が…!?

簡潔完結感想文

  • 年末からイベント満載。2週間ほど猛アタックされると簡単に心が動く外道ヒロイン。
  • 新キャラ。1巻分だけ波乱を巻き起こす短期バイト。次に旧キャラも控えていますので。
  • 自分を全肯定してくれる人が好きな自己愛ヒロイン。一度否定されたら へそ曲げます。

ロイン失格 って最初から言ってましたけど何か、の 8巻。

全体としては 十分に面白いんですよ。
相手の立場を考慮しない利太(りた)の攻勢は、かつて はとりの二重写しだし、
突然 キスされた弘光(ひろみつ)は、かつて はとり がした利太への強引のキスそのもの。

人を呪わば穴二つ。
相手がされて嫌だったことが、今、自分に返ってきているだけ。

でも はとりは、自分の想い通りにならない世界を許せない。
自分勝手な利太も、キスする女も、キスされる弘光も、
自分を中心に進まない物事が彼女を苛立たせ、そして選択を間違えさせる。

あぁ、愚かなる はとり。

はとり はホントにバカだなぁ、と笑い飛ばして読めればいいんですが、
彼女のワガママの被害者が増えるとそうも言っていられない。

相手の立場に立って、自分がされて嫌なことをしない、
そういう基本的なことすら出来ない幼稚な子なんです…。

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はとり を慰めるのは誰にでも出来る。お前は悪くないと、彼女が言ってほしい言葉を言えばいいだけ。

者の はとりへの視線が一層冷たくなる展開が続く。

失恋の際の間違った行動は笑えたけど、
交際の途中の間違った行動は笑えないんだから 仕方ない…。

『1巻』で利太(りた)のヒロインオーディションに応募することなく落ちた はとり。
ヒロイン失格の烙印を押され失意の はとりにヒロイン(というかコメディエンヌ)の才能を見出し、
側においてくれたのが学校一のイケメン・弘光(ひろみつ)。

晴れて弘光が開催したオーディションにヒロインとして合格したが、
はとり には ある重大なヒロインとしての欠点があるように思われる。

それが相手のことを自分以上に想う才能がない。

「誰のことも、一番好きな相手のことも、自分自身に較べれば10分の1も好きじゃないのよね、あなたは」

と言われたのは私が好きな歌人・エッセイストの穂村弘さん(『もしもし、運命の人ですか。』)。

はとりは そんな感じだと思われる。

結局、自分をありのままに肯定してくれる人が好きなだけで、
弘光や(過去の)利太のことは それほど好きじゃないのではないか、という疑問が湧く。

失格どころか 史上最高に自己中ヒロインであったことが判明した はとり。
彼女が選ぶ恋に10分の1も興味が無くなってしまいました。

いや、それすらも作者の意図だということは分かるのだが…。


品内に「本物の想い」を求める少女漫画読者において、これは許せない事態である。

2人のイケメンのどちらかが魅力的で、どちらを選ぶかという問題から、
彼らのどちらが より はとりを甘やかしてくれるかという問題に移行してしまった。

はとり の勝手な行動、なりふり構わない利太の攻勢、
バイト先の人間関係や、自分自身の気持ちの整理、
それらを総合して現実的にはとりに向き合っている弘光。

そんな彼の懊悩など考慮せず、ただ自分にとって その人が優しいかを判断基準にする はとり。

自分のことを棚に上げて、相手の失点だけを見てしまう小さな人です。

はとり と近頃の利太は よく似ている。
相手のことを考えずに、自分の想いだけを喚き散らしていれば いいのだから。

恋愛の好きには、相手を自分以上に大切に想うことも含まれていると思うが、はとり にはそれがない。
それが出来ない人なのかもしれない。

そういう意味では本当にヒロイン失格だ。
はとり は彼女として、弘光のために行動したことは あっただろうか。

初めての交際だから色々と間違えることもあるだろう。
しかし気になるのは、彼女が間違えから何も学ばないことだ。


とり が自分のことを棚に上げるといえば、
弘光がバイト先と学校の先輩・るな から突然キスをされた場面の対処だろう。

彼氏が、交際相手の自分以外とキスをしたこと、
そして黙っていたこと、それを人づてに聞き、不安にさいなまれる はとり。

この一連の負の連鎖は、利太の元カノ・かつての安達(あだち)さんと一緒か(『2巻』)。

今回、同じ立場に立たされて(愚かなる はとり は無自覚だが)
浮かび上がるのは、2人の女性の対処法の差。

本心はどうであれ「気にしてない」と水に流そうとした安達さんと、
相手と弘光を憎むばかりの はとり。

緊急事態にこそ本来の人格や その人の強靭さ が出ると言いますが、
はとり は弱さや負の感情ばかりが目立ちますね。

はとり は弘光を責める。
素直に反省の言葉を述べる弘光の言葉も聞かず、
「やだ やだ こんなの弘光くんじゃないよ」と、
自分の中の理想の弘光像を押し付ける始末。

自分は過ちを許されるが、相手の過ちは許せない。小物です。

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弘光くんが許してきた数々の はとりの行動。はとり は許せない弘光くんの1回の過ち。

序盤の話に戻りますが、結局、
はとり が交際しているのは 彼女が幻想する弘光なんですよね。
自分を無条件に好いて、許してくれる架空の弘光くん。

自分の最大の理解者であり、完璧な者として弘光を捉えている。
だから血の通った人間として、時には暗い感情に呑み込まれるなんて考えたこともない。

彼女の弘光に対しての無神経さも この辺に由来するものだろう。

良いところも悪いところも含めて交際するのではなく、
自分に都合よく編集された弘光を想っているだけ。

そのことに聡明なる弘光くんは気づき始めるのではないか。

どんな結果になっても、落ち込まないで弘光くん、と思わざるを得ない。

弘光くんは本書においてヒーローになれなかっただけで、
世界の誰かのヒーローになる資格も資質も十分に備わっている。

割れ鍋に綴じ蓋、はとり なんぞ利太がお似合いだ。


回から登場する るな は、これっきりの登場ですかね。
最後にあんな隠れキャラが登場したら影が薄くなってしまいます。

るな は「天然ヒロイン」だろうか。
彼女がヒロインならば、恋を自覚するまで時間がかかり、
複数の男性から言い寄られても意に介さず、
最後になって自分の好きな人が誰だか気づく物語だろうか。
(私が提唱する「少女漫画4分類」なら間違いなく「Ⅳ類 恋愛成就型」だろう。)

るな は失恋した弘光くんの恋人候補とも考えられますが
少女漫画の当て馬って、純粋こじらせて次の恋に進むの遅そうだからなぁ…。


今回で誕生日を迎えた利太がビジュアル的にはどんどん男前になっていますね。
序盤では顔が溶けていたのに(私見)、凛々しくなっている。

邪道ヒーローになって何か吹っ切れたか。

今は楽なポジションの利太が、彼氏として合格なのかは謎ですね。
彼も弘光と同じように かりそめの恋を楽しんでいたタイプなので、
本当に はとりを好きになった後なら、重すぎるぐらい重い恋愛をしそうではあるが…。