言いたいことは完結に。

Compactly Completed Comics

邪道ヒロインは ミスコン1位 2位の男性から好かれて 王道ヒロインに堕ちる。

ヒロイン失格 7 (マーガレットコミックスDIGITAL)
幸田 もも子(こうだ ももこ)
ヒロイン失格(ひろいんしっかく)
第07巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

あの弘光が、クリスマスプレゼントに手編みの手袋を! 中島が利太のことを気にしだしたことに気持ちを乱されたが、はとりは弘光一筋でいくことを決意! そして冬休み。弘光の従妹・萌の提案で、はとりは、弘光・利太・中島たちと一緒にスノボへ行くことに! ところが、この旅行中に、はとりの気持ちをグラつかせる事件が…!? 【収録作品】サンキュー・ラストサムライ

簡潔完結感想文

  • 雪山&温泉回。年末の書き入れ時に無料宿泊する迷惑な人たち。遭難はしません(残念)。
  • ライバルへの恐怖。徐々に余裕がなくなる弘光。それは かつての安達さんの姿と重なる。
  • 年末年始。女子に恋を諦められないことを相談する利太。かつての はとりポジションです。

ロイン失格の意味が違ってくる 7巻。

本書の序盤の何が面白かったって、主人公・はとり のヒロイン願望を粉微塵に砕いているところだろう。

想い人・利太(りた)の幼なじみ という地位に安住し、盲目的に彼と結ばれる未来だけを信じていた はとり。

だが、利太は彼を優しく包容する王道ヒロイン・安達(あだち)さんと出会い、
彼自身も恋愛観を改め、これまでになく安定した長期のお付き合いをしていた。

地位に安住するのみで告白する勇気もなかった はとりは、
そこにきて初めて自分が恋愛に敗け、ヒロイン失格だったことを自覚する。

そこからは、遅すぎる告白をしたり、利太に あの手この手で存在をアピールした。
他方では安達さんに対し宣戦布告をし、邪道ヒロインとして彼女を問い詰めたりと好き放題 暴れていた。


だが、最近の はとりは どうだろう。

邪道ヒロインであった頃の生き生きとした生態は落ち着き、
正真正銘の少女漫画、王道ヒロインとなっている。

文化祭で はとりの彼氏・弘光(ひろみつ)くん と利太がミスコンの1位2位を獲った時点で雲行きは怪しかった。

利太と安達さんが交際していることで、はとりのモテモテ漫画からは一線を引いていたが、
それもまた利太のワガママにより崩壊し、通常の三角関係に収まってしまった。

破格だったはずの漫画が、王道の展開を見せ始める。

邪道ヒロインの時点が はとりの輝きの頂点であり、
王道ヒロインとなった今が堕ちたように感じられるのが本書の特異なところ。

この先の見どころは、はとり がどれだけ堕ちるのか、
どれだけ凡庸なヒロインになるのか、でしょうか。

利太も含めて、清濁併せ呑む人間像を見せて欲しいものです。


み込むのが楽しいのは、現在のはとり と過去の利太の二重写しの構造。

現在の はとり=過去の利太という構図が見え、
はとり は一度は振ったはずの利太から猛アタックを受け続け、
完璧な彼氏・弘光くんが多く心を占めているのに、少しずつ心に利太が侵食していく。

これは過去の利太が、安達さんという王道がいるのに、
前向きに自分に向かってくる利太が、中途半端な態度を取り続けていた頃と同じ。

あの頃、身勝手に思えた利太の行動が、
はとり の心の変遷を辿ることによって理解できるようになる。

…ということは、利太も安達さんと はとり の2人から言い寄られる自分に酔っていたのか(笑)?
似た者同士の幼なじみ2人ですから、当たらずとも遠からず かもしれない。


そして現在の中島(なかじま)=過去の弘光と捉えることもでき、
弱っている利太にグッとくる中島。
大局的に物事を見ているからこそ刺さる言葉を放つのも弘光に似ている。

ただ中島まで本格参戦したら収拾がつかなくなるからなのか、
中島の気持ちは『7巻』では抑えられて描かれています。
(というか自然にフェードアウト。物語を盛り上げるための一時的な気の迷いだったのでしょう)

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誰かを忘れた はとりは受け入れるが、誰かを忘れるために自分を利用することは許さない。

現在の弘光くんは、過去の安達さんでしょうか。
正々堂々と利太と付き合い、余裕をもって恋のライバル・はとり にも接していた彼女。
だが、利太に本気になり、はとりの存在を恐れた彼女は理想の自分ではいられなくなる。

今回の雪山旅行で、弘光は利太の本気度や、
一緒にいる はとりとの特別な関係を まざまざと見せられて余裕をなくす。

鈍感な はとりにも気づかれるほど、彼の態度は硬化していて、
はとり は不安にさいなまれ、スキンシップをもって安心感を得ようとするが、
そんな心を動きを弘光は見透かしており、やんわりと距離を置く。

そして弘光は、彼女の心に占める利太の存在も見透かしていて…


在の はとり が過去の利太という図式ならば、
はとり の心が導き出す答えも、利太から容易に推測できるというもの。

ヒロインとしては王道を進み始めた はとりですが、
人間的には徹頭徹尾、邪道なので、私には当然の結論だと思いますが(違ったりして)。

まぁ この2人の場合、気持ちがフラフラしていますから、
最後の最後で やっぱ勘違いでした → 振出しに戻る、でもいいですけどね。

弘光くんは、昨今の少女漫画の理想のヒーロー像の集合体なのかな。

流行のSを採り入れながら、ヒロインに激甘の部分もあって、
格好つけながらも本音もしっかり漏らしてくれる弱さも見せる。

そりゃ、制作側も揃って弘光くんに肩入れするわ、という感じですが、
以前も書きましたが、『1巻』1話目に登場していないキャラと結ばれることは、
古今東西、どの少女漫画でも絶対にない(と思う)。

1話に弘光くんを少しでも登場させなかったことが、本書の大いなる失敗でしょうか。


とり は全力で悪役令嬢にはなれるが、
それは人が自分の羨む地位にいる場合のみに限定されるらしい。

自分が誰かを選び、誰かを選ばないという取捨選択は苦手の様子。

だからグイグイくる利太に対して冷酷になれない。
それがまた利太に付け入る隙を与え、自分を苦境に追い込んでいく。

利太も はとりも中途半端な優しさで、
自分の大事な人を傷つけていくところが似ています。


書が少女漫画のお決まりのコースを進まないのは、山へ行っても遭難しないところ。

『3巻』でキャンプ回も、今回の雪山回でも遭難イベントは発生しなかった。

スノボ初心者の はとり など遭難にうってつけだが、
弘光くんと遭難、スノボの練習を避けて 麓で そり遊びに興じる。

これは はとりの性格全体を表しているのか。
苦手分野を避け続け、怪我をしないところで、気の置けない人と遊ぶ。

そうすることで誰かを(弘光を)傷つけることなど考慮しない。
刹那的に楽しい方を選んでしまう。

バカなのが はとり だという認識はあるが、
自分が傷つくのと、人を傷つけるのでは同じバカでも罪なバカである。


利太が はとり の手袋(弘光の手編み!)を取りに行った場面では、
やっぱり! 利太が遭難するぞ! と お決まりの展開を予想して鼻息を荒くしたのですが、
利太は無事に帰還してしまいました。

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かつて はとり が利太にしてきたように、本気を言葉に乗せれば心は動く。

はとり の弘光との思い出も大事に扱う利太に本気度が見えます。
かつての はとりと同じく諦めの悪いヒロイン(ヒーロー)に心は動いてしまうのかも。

1度は好きと言って土俵に上がること、
何度も好きと言い続けて、その人の心にいる人を押し出すこと、
それが本書の恋愛必勝法だろうか。

はとり の行方不明事件もあるのですが、それも旅館内に引きこもっていただけ。

特に遭難イベントが好きな訳じゃないんですが、
あまりにも少女漫画で遭難が続出するので、気づいたら待望する身体になってしまった。

「サンキュー・ラストサムライ」…
侍を理想の男性像とする剣道少女・亜子(あこ)の前に、侍がタイムスリップしてきて…。

侍好きな女子の前に侍が現れたので、そっちで恋が進むかと思いきや、意外な展開を見せた。

当初の(勝手な)予想と違い侍が当て馬で、
そしてバッドエンドで何だか消化不良を起こした作品。

亜子は ヘタレな浩史(ひろし)でも好きなのだろうが、
もうちょっと好きの純度を高められなかったか。

単純に そんなに出来の良い作品ではない。
これなら本編を もう1話 読ませろ、と思ってしまう。

真剣を持ち歩いている女子高生って、捕まらないですかね。