言いたいことは完結に。

Compactly Completed Comics

ポスターになった あなたの顔写真に 私ならラクガキじゃなくて 口づけしちゃうかも…。

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桃森 ミヨシ(とうもり みよし)
ハツカレ
第6巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

偶然、イブシと出会ったチロ。突然、イブシに手をとられるが、チロは思わず振り払ってしまう。そんな中、ハシモトくんのポスターが貼り出されて、チロは…!? ハシモトの「ハツカノ」編も収録。

簡潔完結感想文

  • ハシモト広告デビュー。客観的にポスターの彼を見て湧き上がってくる気持ち。
  • 寝込みを襲う人。好きという気持ちが一緒の二人。印象的なシーンになりました。
  • side ハシモト「ハツカノ」。中学時代の終わり頃からあなただけ見つめてる


巻を重ねても好きという気持ちが純粋に湧き上がってくる6巻。

作中での交際期間は、年も明けて7,8ヵ月ぐらいで、現実の連載では2年が経過した頃だろうか。
その間、好きの鮮度を一定以上に保ったままに物語が展開されていく点が本当に凄い。

物語には強烈な存在のイブシがいるけれども、彼がいることと主人公・チロとハシモトの好きの間に直接的な関連性はない。
イブシがチロのことを好きなのをハシモトは認知していて、ハシモトの方は同性として負けていられないという意識はある。
が、それによってチロを束縛したり、イブシから遠ざけたりはしていない(イブシとチロの距離感には悩んではいたが)。
そしてチロの方はイブシが自分のことを好きなことを感知していない。
今巻の冒頭で珍しくイブシがチロの手を引いて歩くが、チロはハシモトの存在が浮かんでイブシの手を振りほどく。
チロにとって揺るぎないほどハシモトという存在は特別なのだ。

逆にイブシにとっては手を握ることさえハシモトの専売特許だと痛みを伴う現実が辛いですね。


今巻はそんなチロ側に好きが溢れ出している巻ですね。

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イブシ撮影のハシモトの写真がポスターに!
コンビニのポスターに起用されたハシモト。
駅のホームでも学校でも実物の彼は注目の的、話題の中心。
ちょっとした有名人になることで距離が変わるかもという恐れは既に払拭しているチロ。
なぜならハシモトを好きという気持ちは変わらないから。
チロのなかで少し変わったことといえば、ポスターのハシモトを客観的にみたこと。
外見だけのハシモトを見て、その声、その喋りを想像を膨らませるチロ。
そして朝のホームで実際に会う彼に思わず…。


チロの「思わず…」はその次も続く。
数か月前、勇気を振り絞って声を掛けて、自分とのキョリをなくそうとしてくれたハシモト。
そして今、勉強による寝不足で寝入っている彼とのキョリをなくそうとするチロ。

予期せぬ場面で初キスになりました。
ハッキリ言って、全然ロマンチックではありません。
でも湧き上がる衝動がチロにはあって、そこにたまたま動かないハシモトくんがいて、そこがたまたまイブシの部屋だったということです。
逆に夜景の見える場所でキスしていたら、本書らしさは失われていたでしょう。
そしてチロの側から顔を近づけるというのも、このカップルらしいと言えます。
ハシモト側には未遂・失敗の経験がありますから、今度はチロで、チロから動くことで二人の気持ちが高いレベルで同じだということが表れます。

その場は黙って立ち去ってしまい、ハシモトは知らず仕舞いですが、罪悪感もあって黙っていられないチロは、翌日には勇気を振り絞ってハシモトに事実を告げる。

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ハシモトに白状するチロ
この場面、ハシモトも前日のチロの異変を感じ取っており、チロも嫌われるかもしれない恐れからすぐに立ち直っているのが良いですね。
そして恐怖と対峙してでも秘密を告げるのは、あの日、告白したハシモトとダブる心境であった。
このシンクロから、ハシモトサイドの「あの日」が語られる前日譚に移行する構成が美しいですね。

ハシモトは自分に初キスの記憶がなくても、交際した日のようにガッツポーズして声を上げてます。
そんな喜び方もハシモトらしいので、とやかく言うことはありませんが、これって嬉しいんでしょうかね。
寝てる間にキス、男子→女子の場合は、後々、サイテーと怒られるパターンですけど、
逆の場合、例え初キスであっても喜ぶ場合の方が多いのかな。
減るもんじゃないし、ましてや好きな女の子の方からしてくれたら男冥利に尽きるのでしょうか。ぶっちゃけ人によるでしょうね。


頭頂ではなくて後頭部で髪を結んだイブシは、ただの美形キャラですね。
学園漫画の3年生の生徒会の先輩か文学部部長という感じにも見えます(喋らない限り)。

チロの友人・ちやこ にまでチロを好きという感情を隠さずに出し始めたイブシ。
分をわきまえた付き合いをすると決めたみたいですが、好きという溢れ出す想いは誰にも止められない。
彼にも「思わず…」の瞬間が来るのでしょうか。
ここ数巻メインのような働きだった彼ですが、今回は脇役らしい脇役でしたね。


このご時世、飲酒する描写なんて出版社や社会が許さないから、未成年が酔っぱらうには甘酒でがギリギリの描写なんですかね。
先日、感想を書いた水瀬藍さんの『なみだうさぎ』でも甘酒で女性が乱れるお話がを読んだばかりだったので、私の中でシンクロした感じです。


ちなみに作中でハシモトの写真が起用されたコンビニのおにぎりキャンペーンの「あなたの手作りにはかなわないけど。」というキャッチコピーは違和感がある。
そんなネガティブなフレーズ入れたら購買意欲が削がれます。
ポスターの写真で食べてる おにぎりもコンビニのではなくチロの手作りおにぎりだし。

そういえば撮影はイブシなんですよね。
高校生写真家という設定は上述の『なみだうさぎ』や福山リョウコさんの『悩殺ジャンキー』でも見られる。
高校生でも伍することができる(と思える)ので特殊性や才能を表すのに便利なんでしょうね。